生成AIニュース 期間:2025年9月16日-9月30日

2025年9月後半は、AI業界の基盤を揺るがす大規模な投資や提携、そして社会実装に向けたルール形成が大きく進展した期間でした。半導体市場の勢力図を塗り替える動き、AI規制の新たな基準となる法律の制定、そしてAIが物理世界や人間の創造領域へ進出することによる倫理的課題の顕在化など、今後の技術開発と社会のあり方に重大な影響を与える事象が観測されました。
1. 今期間の目玉AIニュース(トップ3)
【目玉ニュース1】AI覇権を巡る地殻変動:NVIDIAが半導体とインフラで歴史的な提携・投資を加速
AI開発の根幹をなす半導体と計算基盤において、業界の絶対王者であるNVIDIAが市場の未来を決定づける2つの大きな動きを見せました。
一つは、長年のライバルであったIntelとの歴史的提携です。NVIDIAはIntelに50億ドルを戦略的に出資し、データセンター向けのカスタムCPUや、PC向けのGPU統合型SoC(システムオンチップ)を共同開発します。この提携は、NVIDIAにとっては製造拠点を台湾のTSMC依存から米国内へ多様化させ地政学的リスクを軽減する狙いがあり、Intelにとっては自社のファウンドリ(半導体受託製造)事業の価値を証明する絶好の機会となります。これは米国のCHIPS法が目指す国内半導体製造能力の強化という国家戦略とも合致しており、半導体エコシステムの勢力図を大きく塗り替える可能性があります。
もう一つは、OpenAIとの戦略的提携と最大1000億ドル規模の投資計画です。この計画では、総電力容量10ギガワット(GW)にも及ぶ空前の規模のAIデータセンターを段階的に建設します。これは単なるインフラ投資に留まらず、AGI(汎用人工知能)の実現に向けた研究開発を加速させる「国家レベル」のAI基盤を構築する試みです。一部では、出資資金が半導体購入費としてNVIDIAに還流する「循環取引」との指摘や、市場独占への懸念も出ていますが、AI開発競争が新たなステージに突入したことを象徴する出来事と言えるでしょう。
【目玉ニュース2】AI規制の本格化:カリフォルニア州が米国初の包括的AI安全法を制定
テクノロジー産業の中心地であるカリフォルニア州で、米国初となるフロンティアAIモデルの透明性を義務付ける画期的な法律「SB53」が成立しました。この法律は、大規模なAIモデルを開発する企業に対し、以下の点を義務付けています。
- 壊滅的リスクに対する安全管理フレームワークの開示
- 重大な安全インシデントの報告
- リスクを告発する従業員を保護する「内部告発者保護条項」
連邦レベルでの包括的な規制がない米国において、この法律が事実上の国家標準となる可能性が高いと見られています。開発手法を直接縛るのではなく「透明性」を核に据えた点が特徴ですが、高度なコンプライアンス要求がスタートアップの参入障壁となり、大手IT企業の市場支配を強固にする「規制の堀」になるという懸念も指摘されています。
この動きに呼応するように、欧州でもイタリアがEUの「AI法」に準拠した国内初の包括的なAI規制法を承認しており、AIの安全で倫理的な利用に向けたルール形成が世界的に加速しています。
【目玉ニュース3】AIの社会実装と倫理的課題:AI女優の登場と物理世界への進出
AIがデジタル空間を飛び出し、私たちの創造活動や日常生活に急速に浸透し始めています。その象徴的な出来事が、完全AI生成の俳優「ティリー・ノーウッド」の登場です。制作者側は「芸術作品」と主張する一方、米国俳優組合(SAG-AFTRA)は「無数の俳優の仕事を許可も報酬もなく学習させたプログラム」と猛反発。これは、生成AIの根幹にある学習データの権利問題や、人間の創造性、労働がAIによってどう変わるのかという根源的な問いを社会に突きつけました。
同時に、AIの物理世界への実装も加速しています。Amazonが生成AIを搭載した家電製品群を発表し、Metaはリアルな3DアバターAIを公開。国内でも、JR東日本が信号設備の復旧支援にAIを導入したり、セブン-イレブンが店舗でのAIロボット活用を検証したりと、交通、小売、製造、医療といった様々な現場での応用が本格化しています。
社会に実質的な価値をもたらし始めた一方で、その利用に伴う倫理的、法的な課題解決が急務となっています。
2. 国内AIニュース一覧
◆ 主要スタートアップ資金調達
企業名 | 調達額(円) | ラウンド | 主要事業 | 発表日 |
LocationMind | 17.9億 | シリーズB | 位置情報AI・宇宙事業 | |
Zen Intelligence | 15億 | シリーズA | 建設現場向け施工管理AI | |
INDX | 非公開 | シード | 非構造化データAIプラットフォーム |
◆ 研究開発・技術アップデート
- ソフトバンクと理研 :
ソフトバンクのAI計算基盤と理化学研究所の量子コンピュータを接続し、創薬や医療分野での活用を目指すハイブリッド計算環境の運用を開始。 - PFN・さくら・NICT :
Preferred Networks、さくらインターネット、情報通信研究機構(NICT)が連携し、日本の文化や法制度に対応した国産生成AIエコシステムの共同推進で合意。 - 富士通 :
生成AIモデルの精度を維持しつつ、推論速度を3倍に高速化する軽量化技術を開発。 - 電通、ソフトバンクなど4社 :
「心を動かす」日本語の広告コピーに特化した生成AIの共同研究を開始。 - I.Y.P Consulting:
GPUを必要とせず、PCやスマートフォンで動作する小規模言語モデル(SLM)の開発に成功。
◆ 業務利用・サービス展開
- GMOインターネットグループ:
創業者の思考を学習したAIヒューマノイド「熊谷正寿」を発表し、経営業務を24時間体制で支援する実証実験を開始。 - JR東日本 :
新幹線などの信号設備に障害が発生した際、原因究明と対策立案を支援する生成AIを導入。 - NTTデータ :
生成AIを活用し、国際送金時の煩雑な住所入力を効率化する新サービス「Addresstune™」をグローバルで展開。 - セブン-イレブンとテレイグジスタンス:
店舗での接客や業務を担う生成AI搭載ヒューマノイドロボットの共同開発と実証実験を開始。 - さくらインターネット:
国内クラウド基盤上でLLMを月3000回まで無料で利用できるAPIサービス「さくらのAIエンジン」の提供を開始。
◆ 政策・その他
- 内閣府 :
日本のAI国家戦略を具体化するため、「人工知能戦略専門調査会」の第1回会合を開催。
3. 海外AIニュース一覧
◆ 政策・規制
- 米国大統領令 :
AIと大規模データを活用し、小児がんの研究と治療を加速させる国家プロジェクトを指示する大統領令に署名。 - 欧州委員会:
EU AI法に基づき、高リスクAIシステム提供者に義務付けられる「重大インシデント」報告に関するガイダンス案の意見公募を開始。 - 香港:
政府各部門のAI活用を統括推進する専門チーム「AI効果向上チーム」を新設。
◆ 主要な投資・企業戦略
企業/コンソーシアム | 投資額(米ドル) | 地域 | 主要プロジェクト |
ソフトバンクG, OpenAI, Oracle | 5,000億(総コミット) | 米国(5拠点) | AIデータセンター「Stargate」 |
Alibaba Cloud | 530億(今後3年) | グローバル | フルスタックAIサービス、データセンター新設 |
Microsoft | 300億 | 英国 | クラウド・AIインフラ、英国最大のスーパーコンピュータ |
CoreWeave & Meta | 142億 | 米国 | Meta向けAIクラウドインフラ提供契約 |
NVIDIA & Intel | 50億(NVIDIAによる投資) | 米国 | カスタムCPUおよびSoCの共同開発 |
- Figure AI :
人間型ロボットを開発するスタートアップFigure AIが、NVIDIAやジェフ・ベゾス氏などから10億ドルを調達。企業評価額は約390億ドルに。 - Anthropic :
AIモデル「Claude」を開発するAnthropicが、グローバル需要の拡大に対応するため東京への進出と海外人員の3倍増強を表明。
◆ 製品発表・技術アップデート
- Alibaba:
1兆パラメータを超える同社史上最大・最強のLLM「Qwen3-Max」を発表。オープンソースで提供し、AIの民主化への貢献が評価される。 - Google :
検索サービスに、画像内のオブジェクトを対話形式で絞り込める高度なビジュアル検索機能(Gemini 2.5統合)を導入。また、ChromeブラウザにGeminiを直接統合し、タブ横断での要約や質疑応答を可能に。 - DeepMind :
Google DeepMindの「Gemini 2.5」が、国際大学対抗プログラミングコンテストで人間を上回る金メダル級の成績を収め、AIの高度な推論能力を証明。 - OpenAI:
最新モデル「GPT-5」が、44の職業において人間の専門家と同等以上のタスク遂行能力を示したとするベンチマークテスト結果を報告。 - Meta (9/18):
通知や対話が可能な小型ディスプレイを内蔵した新型スマートグラスを発表。
◆ 業界動向・倫理
- シャドーAIのリスク :
IBMの調査により、従業員が会社の許可なく業務で利用する「シャドーAI」に起因する情報漏洩が、調査対象組織の20%で発生していることが判明。セキュリティリスクとして深刻化。 - AI採用におけるバイアス:
複数の調査で、採用に利用されるAIが人種や性別のバイアスを反映・増幅させていることが報告され、アルゴリズムの公平性が改めて課題として浮き彫りに。
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