News 2025.05.15

技術革新と社会の変革、AIが加速する未来像
2025年5月1日から15日までのAIニュースまとめです。
世界のAI業界はまさに激動の様相を呈しました。国内では経済産業省が大型
プロジェクトを始動させ、教育現場でのAI活用に向けた関心が高まる一方、海外ではGoogle、
OpenAI、Anthropicといった主要企業が次世代技術や新サービスを相次いで発表。Appleも検索
戦略の転換を示唆するなど、AIが私たちの生活やビジネスを根本から変えようとしています。し
かし、その急速な進化は、著作権保護やデータ利用のあり方など、社会的な課題も浮き彫りにし
ています。本レポートでは、AIに詳しくないビジネスパーソンの皆様にも分かりやすく、この2週間
の主要な動きを国内外に分けて解説します。

【国内ニュース】政府主導のAI開発支援と教育現場の動向

◆ 経産省、生成AI開発に8億円の懸賞金プロジェクト「GENIAC-PRIZE」開始 (5月9
日)

経済産業省とNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は5月9日、日本のAI競争力強化
を目指し、生成AIの社会実装を加速させるための大型プロジェクト「GENIAC-PRIZE」をスタート
させました。総額約8億円の懸賞金をかけ、以下の4分野でのAI開発を公募します。
● 製造業における暗黙知(経験や勘)の形式知化(データ化・マニュアル化)
● カスタマーサポートの生産性向上
● 特許審査業務の効率化
● AIの安全性向上技術の開発
開発期間は2025年5月から12月、表彰式は2026年3月を予定。日本の産業競争力強化
に向けた、国を挙げた注目の取り組みです。

◆ 教育現場、生成AIへの関心9割も導入は4割 期待と慎重さが交錯
教育AI活用協会の調査によると、全国の教育機関の約9割が生成AIに高い関心を示しているも
のの、実際に導入または導入を検討しているのは4割程度にとどまっていることが明らかになり
ました。導入事例の不足や、情報漏洩などのリスク対策が課題となっている模様です。教育現場
でのAI活用は、大きな期待が寄せられる一方で、慎重な議論と準備が進められている段階と言
えるでしょう。

【海外ニュース】大手IT企業の技術革新と社会の反応

【技術革新の最前線】加速するAI開発、新モデル・新機能が続々
◆ Google:新AI「Gemini 2.5 Pro」早期リリース、DeepMindからは音楽生成・イルカ語翻訳も
Googleは5月6日、開発者イベント「Google I/O」に先駆け、最新AIモデル「Gemini 2.5 Pro
Preview」をサプライズリリースしました。特にプログラミング能力が大幅に強化され、ウェブアプ
リ開発性能が飛躍的に向上したとされています。
さらに5月13日には、Google DeepMindが複数の画期的なAIを発表。テキスト指示から音楽を自
動生成する「Lyria」、研究者や中小企業でも利用しやすい高性能言語モデル「Gemma 3」、そし
てイルカの鳴き声や行動を分析しコミュニケーションの解読を目指す研究用AI「DolphinGemma
」など、AIの応用範囲の広がりを示す発表が相次ぎました。

◆ Anthropic:「Claude」機能強化と大型資金調達、企業価値は9兆円超えも
AIスタートアップの雄、Anthropicも精力的な動きを見せました。

● 5月1日: AIチャットボット「Claude」に外部システムやデータと連携できる機能を追加。

● 5月5日: 科学研究分野でのAI活用を促進する「AI for Science Program」を発表。



同日、Anthropicは新たな資金調達を完了し、企業価値がポストマネー(資金調達後)評
価額で615億ドル(約9.6兆円 ※1ドル156円換算)に達したと発表。AI業界における競争
の激しさと期待の大きさを物語っています。

◆ OpenAI:ヘルスケア向け評価データセット公開、組織運営は非営利団体主導を継続
ChatGPTの開発元であるOpenAIは5月13日、ヘルスケア分野でのAIの精度を評価するための
大規模データセット「HealthBench」をリリースしました。医療関連の質問に対するAIの回答能力
をテストするためのもので、医療AIの信頼性向上に貢献することが期待されます。
また、OpenAIは組織運営に関して、昨年12月に発表した営利企業主導への再編計画を変更し、
引き続き非営利団体が会社を管理していく方針を改めて示しました。AI開発の倫理と利益追求
のバランスという、業界全体の課題を象徴する動きとして注目されます。

◆ Apple:SafariにAI検索エンジン導入か、検索体験に革命の可能性
Appleが、長年の提携先であるGoogleに代わり、AIに特化した検索エンジンを標準ブラウザ「
Safari」に導入する可能性が浮上しています。同社幹部は「AIを活用した検索サービスが従来型
に取って代わる可能性が高い」と発言。実現すれば、私たちの情報検索の方法が劇的に変わる
かもしれません。

◆ NovelAI:次世代画像生成モデル「V4.5」が圧倒的進化、指示への忠実度向上
クリエイター向けAIツールを提供するNovelAIが、開発中の最新画像生成モデル「V4.5 Curated
」の進化を発表。従来版と比較して、画像の美しさ、背景描写、細部の表現力、そして何よりユー
ザーの指示に対する忠実度が大幅に向上したとのこと。ブラインドテストでは92.1%という驚異的
な高評価を獲得しており、クリエイティブ分野でのAI活用が一層進むことが期待されます。

【AIと社会】データ利用、著作権、国際政策の新たな動き

◆ Meta:欧州ユーザーの公開データをAI学習に利用へ (5月27日~実施予定)
FacebookやInstagramを運営するMeta社は、5月27日から欧州のユーザーが公開している投稿
やコメントをAIモデルのトレーニングに利用する計画を公表しました。プライベートメッセージや18
歳未満のユーザーのコンテンツは対象外とし、ユーザーにはオプトアウト(利用拒否)の選択肢
が提供されるとのことです。AIの学習データ収集とプライバシー保護のバランスが問われます。

◆ アーティストたちがAI規制を要求:著作権保護の強化求める (5月10日)
エルトン・ジョンやデュア・リパなど約400人の著名アーティストが、AIによる創作物に関する著作
権保護の強化を求め、英国首相に対し法案修正を支持するよう訴えました。AI開発者に対し、著
作物利用の透明性を求める内容です。一方で、過度な規制はAI開発の国際競争力を損なうとの
懸念も出ており、創造性と技術革新の両立が課題となっています。

◆ 米国政府:AI半導体の輸出政策に柔軟な姿勢、同盟国への供給を示唆 (5月14日)
米ホワイトハウス高官は5月14日、国家安全保障上のリスクを管理しつつも、AI用半導体や関連
技術の世界的な普及を必ずしも阻止する必要はないとの見解を示しました。特にサウジアラビア
などの同盟国への輸出について、より柔軟な姿勢を表明。これは、AI技術の国際的なサプライ
チェーンや米国の外交戦略にも影響を与える可能性のある動きです。

【まとめと展望】AIは実用段階へ、倫理とルールの整備が急務
2025年5月前半のAI業界は、まさに技術革新のラッシュでした。Googleの多才なAIモデル群や
Anthropicの「Claude」の進化は、AIが特定のタスクだけでなく、より広範な知的作業をこなせる
汎用性を持ち始めていることを示しています。また、経産省のプロジェクトやOpenAIのヘルスケ
ア分野への取り組みは、AIが研究段階から実用化、そして社会課題の解決へと本格的に舵を切
り始めたことを意味します。
しかし、Metaのデータ利用方針やアーティストの著作権問題、さらにはAI半導体をめぐる国際的
な動きは、技術の進歩と同時に、倫理的な配慮、法整備、そして国際的な協調が不可欠であるこ
とを明確に示しています。AIがもたらす恩恵を最大限に享受しつつ、リスクを適切に管理していく
ためには、企業、政府、そして私たち一人ひとりがAIに関する理解を深め、建設的な議論を続け
ていくことが求められています。AIの進化は止まりません。今後もその動向から目が離せませ
ん。

関連記事

News 2025.05.01

MCPとは?~わかりやすい解説~【AI活用・AI導入にも注目の新共通規格】

AI時代のインバウンド対策にも効く、LLMの原点的活用法

PAGE TOP